2014年10月13日、フェイスブック(http://www.facebook.com/aritearu)に投稿したものです。


私自身、これまでの人生の中で、他の人にいいことをしたと思えることはあまりない。



唯一の例外だと思えるものは、小学4年生の頃のこと。当時私は鹿児島の宇宿小学校にいたのだが、

同級生の彼がどのように生きているのか思い巡らすことがある。



昭和40年代前半は裕福な家も次第に増えていく時代だったが、彼は白髪があり、学校では一人ぼっち

で身なりもみすぼらしかった。



私は当時、クラスの人気者とは言えないものの、遊び好きな陽気な性格で友達もたくさんいたが、

何故か彼のことが気になっていた。



ある雨の日、彼を傘にいれて彼の家まで送っていったが、とても家とは呼べないような4畳半も

満たない掘っ立て小屋で、父親しか見なかった。



それ以降、彼を自分の家に呼んだり、れんげ草の広がる道端で家から持ってきた絵本を一緒に

読んだりしたが、絵本を見たときの彼の瞳は大きく見開いているように感じた。



その絵本はロシアの民話「石の花」だったような記憶がある。



それから直ぐに私は転校したため、その後の彼ら親子がどのような生活を送っていたのか知ら

ないし、名前も「白木君」とかすかに覚えているが、定かではない。



ただ、絵本を見たときの彼の驚きに満ちた瞳を忘れられない。



彼にとって私の行為は迷惑だったかも知れない。



でも、私にとっては彼と過ごした時間は今でも貴重だと感じられてならない。






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