2013年8月17日、フェイスブック(http://www.facebook.com/aritearu)に投稿した記事です。
生命科学者の柳澤桂子さん、精神科医の神谷美恵子さんの言葉を紹介します。
私自身を含めて世界の多くの人に、この視点が心に灯りますように。
遺伝子の多様性がなければ、私たち人類はこの地球に生まれることさえ出来なかったでしょう。
もちろん私という存在も。
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「生きものとしての私たちを考えると、『生きる価値のない生』というものはないと思います。ある頻度で
遺伝的に障害をもった子供は生まれてきますが、そうした多様性が維持されるシステムこそが遺伝子
の本質なのです。」
「私たちが生まれるときにどのような遺伝子を授かるかは、誰にもきめることができません。障害を
もっている人は、私が受け取ったかもしれない障害の遺伝子を、私に代わって受け取ってくれた人
です。障害をもった人が快適に過ごせるように、私たちはできるかぎりのことをしなければならない
と思うのです。」
「柳澤桂子 いのちのことば」柳澤桂子著 集英社より引用
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「癩者に」
光りうしないたる眼うつろに
肢うしないたる体担われて
診察台にどさりと載せられたる癩者よ、
私はあなたの前に首を垂れる。
あなたは黙っている。
かすかに微笑んでさえいる。
ああしかし、その沈黙は、微笑みは
長い戦いの後にかち得られたるものだ。
運命とすれすれに生きているあなたよ、
のがれようとて放さぬその鉄の手に
朝も昼も夜もつかまえられて、
十年、二十年と生きて来たあなたよ。
何故私たちでなくてあなたが?
あなたは代って下さったのだ、
代って人としてあらゆるものを奪われ、
地獄の責苦を悩みぬいて下さったのだ。
許して下さい、癩者よ。
浅く、かろく、生の海の面に浮かび漂うて、
そこはかとなく神だの霊魂だのと
きこえよき言葉あやつる私たちを。
かく心に叫びて首たるれば、
あなたはただ黙っている。
そして傷ましくも歪められたる顔に、
かすかなる微笑みさえ浮かべている。
「うつわの歌」 神谷美恵子著 みすず書房 より引用
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